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ナカヤマフェスタは凱旋門賞で評価以上の走りを見せた

9番人気からの2着は立派な結果です

2010年 89回 凱旋門賞結果
着 馬 騎手
1 ワークフォース R・ムーア
2 ナカヤマフェスタ 蛯名正義
3 サラフィナ G・モッセ

1999年の凱旋門賞で、エルコンドルパサーが勝利まであと半馬身に迫る2着となって以降、日本において同レース制覇への気運は高まるばかりだったわ。

だけど翌年以降の成績は振るわず、マンハッタンカフェ13着、タップダンスシチー17着、ディープインパクト失格(3位入線)、メイショウサムソン10着といずれも勝利とは程遠い結果。

一度は手にしかけた栄冠がまた遠のいていくような現状に、ファンは歯噛みしたわ。

そんな中、2010年には新たに2頭の日本馬が凱旋門賞に挑戦することとなったわ。

『ヴィクトワールピサ』と『ナカヤマフェスタ』よ。

 

これまで凱旋門賞への遠征といえば、日本国内の超一流馬によって行われるのが常だったわ。

10億円ホースのタップダンスシチーや、社会現象を巻き起こしたディープインパクトなど、もはや日本国内に敵のいなくなった名馬達によって凱旋門賞挑戦の歴史は紡がれてきたのよ。

 

そういった意味で、この年の2頭は異例だったわ。

まず、この2頭のうち本命と目されていたヴィクトワールピサは古馬との対戦実績に乏しい3歳馬。

ナカヤマフェスタはG1古馬でこそあったものの、遠征前の宝塚記念では8番人気と、特段の注目を集める馬ではなかったのよ。

 

だけど、陣営にはそれぞれ確かな勝機があったわ。

まずヴィクトワールピサは3歳馬だから、古馬より3.5kgも軽い斤量でレースに臨むことができる。

ここまで皐月賞勝利、日本ダービー3着と実力を示してきたヴィクトワールピサにとっては、古馬との対戦実績の乏しさを補って余りある好条件だったの。

 

そしてナカヤマフェスタには、かつてエルコンドルパサーを2着に導いた二ノ宮調教師と蛯名騎手が帯同することが決定していたわ。

彼らは「チーム・エルコンドルパサー」として、11年越しの悲願を果たそうとしていたのよ。

 

フランスに降り立って以降の前哨戦では、ヴィクトワールピサがニエル賞で確かな末脚を見せて4着、ナカヤマフェスタがフォワ賞で2着と、それぞれ見どころ十分な結果を残したわ。

 

だけどレース当日は、ヴィクトワールピサが10番、ナカヤマフェスタが9番人気。

エプソムダービーをレコードで勝利したワークフォースや、G1四冠のフェームアンドグローリーなどの有力馬が出走する今回のレースで、一介の海外G1馬に過ぎない日本勢はあくまで伏兵の扱いだったわ。

現地時間16:05。
ゲートが開くと、大きく出遅れる馬はおらず馬群はひとかたまり。

プヴォワールアブソリュやプラントゥールらが前方で先行争いをするなか、ナカヤマフェスタは中段外側、本命ヴィクトワールピサはやや内につけていたの。

フランス競馬特有のゆったりとした速さでレースは進み、第三コーナーを抜けてフォルス・ストレートへ。

各馬が最後の直線に向けて位置取りを競う中、日本馬2頭は思わぬ悲劇に襲われたわ。

 

馬群に包まれ、進路を失ってしまったのよ。

特にナカヤマフェスタは外から馬体をぶつけられ、鞍上の蛯名騎手が立ち上がるほどの不利を受けたわ。

欧州馬たちが思い通りに馬体を内に潜らせ、また外に持ち出す中、ナカヤマフェスタはワークフォースの進出に合わせるようにしてどうにか進路を確保したわ。

 

レースが最後の直線に至るころ、日本のファンの間には早くも諦めのムードが漂っていたわ。

本命ヴィクトワールピサは走路確保のために最後方まで順位を下げたうえ、ナカヤマフェスタもここまでにかなりの不利を受けていたからよ。

今年もまた駄目なのか。

諦念に顔を伏せたファン達の耳に、実況席からある日本馬の名前が飛び込んできたわ。

ナカヤマフェスタよ。

 

最後のたたき合いを繰り広げる馬たちの先頭に、ナカヤマフェスタの姿があったわ。

その末脚はかつて二ノ宮調教師が仕上げ、蛯名騎手が手綱をとった名馬、エルコンドルパサーを思わせるほどの勢い。

内からのワークフォースの猛追を必死で凌ぐうち、2頭は他馬を置き去りにしていたのよ。

 

残り100m、ワークフォースが先頭に立ったわ。

だけど、ナカヤマフェスタはまだ脚を残していたの。

一時はクビ差ほどまで開いた両者の間隔が、一完歩ごとにじわり、じわりと詰まっていく。

このまま差し返してくれ――、日本中のファンが、期待とも祈りともつかない気持ちでたたき合いを見つめたわ。

だけど、ナカヤマフェスタが先頭にアタマ差まで迫ったそのとき、ワークフォースの鼻先はゴールラインを通過していたわ。

 

またもお預けとなった日本馬の勝利。

だけど、凱旋門賞での連対は日本調教馬として11年ぶり、内国産馬としては初めての快挙だったわ。

 

当時、決して超一流とはいえなかったナカヤマフェスタ。

彼が凱旋門賞で2着となった事実は、日本の競馬関係者を大いに驚かせたわ。

そして当日の着順こそ7着と振るわなかったヴィクトワールピサだけど、彼もまた3歳馬による凱旋門賞挑戦という貴重な前例を作り上げ、次世代へバトンを繋いだのよ。

 

そうして日本競馬界の新たなマイルストーンとなった2頭は、翌年ふたたび凱旋門賞に挑むこととなったわ。

結果はヴィクトワールピサが出走取りやめ、ナカヤマフェスタが12着というものだったわ。

だけど彼らの挑戦し続ける姿勢は、日本競馬界を大きく勇気づけたのよ。

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