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スペシャルウィークは天才武豊をダービージョッキーに導きました

日本ダービー・天皇賞春・秋・ジャパンカップなど輝かしい勝ち鞍を残しました
目次

スペシャルウィークの基本情報

馬名 スペシャルウィーク
生年月日 1995年5月2日
サンデーサイレンス
キャンペンガール
戦績 17戦10勝
主な勝ち鞍 ’98日本ダービー(G1)
’99天皇賞(春)(G1)
’99天皇賞(秋)(G1)
’99ジャパンカップ(G1)
調教師 白井寿昭
騎手 武豊
馬主 臼田浩義
生産者 日高大洋牧場

 

 

デビューからタイトルを欲しいままに手にしていた武豊。

 

だけど、一つだけ未だに届かないタイトルがあったの。

 

それは、“日本ダービー”よ。

 

気が付けばデビューから10年が経っていたわ。

 

そんな武豊に、念願のタイトルをもたらす馬が現れたの。 

10年目にして栄光を掴んだかけがえのない相棒

 

それが

 

『スペシャルウィーク』よ。

 

スペシャルウィークの母キャンペンガールは、日本有数の名牝系統として有名なシラオキの血筋なの。 

だけど、キャンペンガールはサンデーサイレンスとの間に子供を宿していたころ何度も腹痛を起こし、明らかに弱っていたわ。

 

そして、その黒鹿毛の牡馬を出産した数日後に亡くなってしまったの。

 

その代償で生まれたのがスペシャルウィークだったのよ。

 

母を亡くしてしまったスペシャルウィークは、農耕用の乳母に育てられていたわ。 

生まれながらに母親がいないと言う悲しみに苛まれたスペシャルウィークを、牧場の人たちが手塩にかけて育てたの。

 

故に人を恐れることなく育っていったわ。

 

無事、競走馬としてデビューを迎えられるようになったスペシャルウィークは、栗東の白井寿昭厩舎に入厩をしたわ。 

11月の阪神でデビュー戦を迎えたスペシャルウィークは、単勝オッズ1.4倍の圧倒的支持を受けたの。

 

大外枠から飛び出し好位に取り付くと、特に折り合いを欠くところなどを見せることなく直線に入っていったわ。

 

直線で追い出すと、独特な大きなストライドで前との差を詰めていき2着に軽く2馬身の差を付けて快勝。

 

将来を期待させる走りだったわね。

 

2戦目は500万下の白梅賞。 

確勝と思われていたけど、人気薄の馬に足元をすくわれ2着。

 

ここを勝ってクラシックロードというプランに暗雲が立ち込めたわ。

 

3戦目は各上挑戦ながらなんとかきさらぎ賞に出走することが出来たの。 

中団からレースを進めていき、直線では馬場の真ん中を軽々伸びてきて1.7倍の人気に応え重賞初勝利。

 

これで、クラシックへの道は開けたわ。

 

あとは、待っているライバル達との戦いだけだったの。

 

きさらぎ賞を勝ったスペシャルウィークは、王道路線の皐月賞トライアル弥生賞へ東上してきたわ。

 

迎え撃つライバル達も強力だったの。 

1番人気は世界的な名血をもつ、東京スポーツ杯勝ちのキングヘイロー。

 

スペシャルウィークは2番人気だったわ。

 

3番人気は2戦2勝の芦毛の逃げ馬のセイウンスカイ。

 

と3強の争いだったわ。

 

まずはセイウンスカイがハナに立ちレースを引っ張っていったの。 

中団の内にキングヘイロー。

 

その外にスペシャルウィークといった隊列で流れていったわ。

 

残り600mにかかったところで、セイウンスカイが後続を離しにかかったの。

 

4馬身ほどのリードを持ってセイウンスカイが坂を上ったわ。

 

完全にセイウンスカイの勝ちパターンを外からスペシャルウィークが豪快に差し切り勝利。

 

これでクラシックの主役に躍り出たのよ。

 

1998年4月19日牡馬クラシック第一関門の皐月賞が中山競馬場で行われたわ。 

人気は弥生賞とは変わり、スペシャルウィーク・セイウンスカイ・キングヘイローの順だったわ。

 

中でもスペシャルウィークは1.8倍と頭一つ抜けた人気だったわね。

 

スペシャルウィークにはいくつかの懸念材料があったわ。 

1つ目は大外18番枠からのスタートであること。

 

この年の中山競馬場は内ラチを3メートルほど外にずらしており、内側の芝の状態が抜群だったの。

 

2つ目は弥生賞で負かしたセイウンスカイの鞍上が横山典弘に変わったことだったわ。

 

この懸念材料が見事結果に反映してしまったの。

 

スタートし、逃げると思ったセイウンスカイはまさかの2番手。 

そのセイウンスカイを見る形でキングヘイロー。

 

スペシャルウィークは外枠が災いし後方の位置取りとなったわ。

 

3コーナーを回りセイウンスカイが徐々に前に迫っていったの。 

それを目掛けてキングヘイローも追い出したわ。

 

スペシャルウィークは大外に持ち出したの。

 

4コーナーで先頭に立ったセイウンスカイに迫るが、2馬身差のところで先頭はゴールをしたわ。

 

スペシャルウィークは枠に泣かされ、横山典弘にしてやられた形になったの。

 

皐月賞は負けてしまったけど、本番はあくまでもダービーだったわ。

 

1998年6月7日第65回日本ダービー。 

何がなんでも欲しいのは勝利だけだったわ。

 

天才の名を欲しいままにした男に遂に栄冠が訪れたのよ。

 

皐月賞では後塵を拝したけど、ファンはスペシャルウィークの強さを信じていたわ。 

ここでも1番人気。

 

紛れの少ない東京競馬場なら勝てると思っていたわ。

 

午後3時30分。 

運命のスタートが切られたの。

 

場内はどよめいたわ。 

キングヘイローが逃げてしまったの。

 

スペシャルウィークと武豊はちょうど中団の内を進んでいたわ。 

先頭からシンガリまでが固まったまま直線に向いたの。

 

2番手からセイウンスカイが抜け出したわ。

 

その時だったわ、セイウンスカイの横から赤い帽子が瞬く間に他馬を置き去ったの。 

スペシャルウィークだったわ。

 

残り200mを過ぎ勝ちはほぼ決まったわ。 

そして、最後は5馬身差を付けての勝利。

 

武豊が待ちに待ったダービーの栄光を掴みとった瞬間だったわね。

 

晴れてダービー馬となったスペシャルウィークは秋にセイウンスカイとの3度目の戦いで決着を付けるために休みに入ったわ。
そして秋は京都新聞杯から始動し、人気に応えてキッチリ勝利したの。

 

セイウンスカイと雌雄を決するべく菊花賞に向かったわ。

 

1998年11月8日第59回菊花賞。 

人気はスペシャルウィークとセイウンスカイの2強対決だったわ。

 

やはりセイウンスカイがハナに立ちペースを作っていったの。 

1000m通過が59.6と決して遅いペースではなかったわ。

 

スペシャルウィークはいつも通り中団で脚を溜めていた。

 

先頭から差があったから飛ばしていると思われたけど、向こう正面で横山典弘は息を入れたわ。

 

これが勝負の分かれ目だったのよ。

 

残り800mから再びペースを上げたわ。

 

スペシャルウィークは坂を下り追いすがったけど、差は詰まる事はなかったわ。

 

そのままスペシャルウィークは2着でゴール。

 

勝ったセイウンスカイのタイムは3:03.2の当時のレコードだったわ。

 

またもや横山典弘にしてやれてしまったの。

 

次走にスペシャルウィーク陣営が選んだのはジャパンカップ。 

だけど、ここでも同年代のライバルに負けてしまうの。

 

そう、エルコンドルパサーよ。

 

結果はエルコンドルパサーの3着。

 

この年の3歳馬は錚々たるメンバーだったわ。

 

1999年。 陣営は年内限りでの引退を発表したわ。 

そして、凱旋門賞挑戦のプランも持ち上がったの。

 

だけど、ここでも同年代の栗毛の怪物が立ちはだかったわ。

 

年明け初戦のアメリカジョッキークラブカップと阪神大賞典を連勝して挑んだ第119回天皇賞(春)。 

これまで差し脚に徹していたスペシャルウィークが新境地を開拓し、好位からの競馬に徹したの。

 

好スタートから逃げるセイウンスカイを終始3番手に付けマーク。 

もう一頭のライバルのメジロブライトは後方からだったわ。

 

最後の直線でセイウンスカイに並びかけると、最後は後方から追い込んできたメジロブライトを凌いでゴール。

 

見事春の盾を手に入れたわ。

 

そして、凱旋門賞への試金石の第40回宝塚記念。 

当然、ファンはスペシャルウィークが勝つと思っていたの。

 

その思いが単勝オッズ1.5倍に現れていたわ。

 

だけど、それをよしとしない馬が一頭いたわ。 

栗毛の怪物グラスワンダーよ。

 

位置取りはスペシャルウィークが前、グラスワンダーが後ろの展開だったわ。 

相手を決めたときの的場均は実に怖かったわね。

 

先にスペシャルウィークが動いたわ。

 

それに合わせてグラスワンダーも動いたの。

 

直線は一騎打ちになると思ったわ。 

だけど、栗毛の怪物にあっという間に置き去りにされ3馬身差を付けられての敗北だったわ。

 

まさに完敗であり、プライドをへし折られた形となったのね。

 

この敗戦で凱旋門賞挑戦は撤回され、秋は国内のレースに専念することが決まったわ。

 

秋の初戦は京都大賞典。 

馬体重は今までで1番重い486㎏。

 

それに調教でも動かなくなっていたわ。

 

結果は7着と初めて掲示板を外したわ。

 

とても、あと1ヶ月で調子が戻るとは思えなかったわね。

 

それぐらいの敗戦だったわ。

 

1999年10月31日第120回天皇賞(秋)当日の東京競馬場。 

スペシャルウィークの敗因に馬体重を上げた調教師の白井は、この当日の朝にダートコースでスペシャルウィークに運動をさせたわ。

 

最後の切り札だったの。

 

ダービーくらいの馬体重に近づけたいというのが白井の狙いだったのよ。

 

これで負けたら示しがつかないけれど、白井は己の信念にかけたのね。

 

パドックに出てきたスペシャルウィークの馬体重は470㎏。 

前走から-16㎏。

 

数字は整ったわ。

 

後は、馬が走るかどうかだけだったわね。

 

これまで全てのレースで2番人気以内だったスペシャルウィークが初めて4番人気と低評価を受ける事になったわ。

 

やはり、見る側も不安があったわね。

 

午後3時45分。 

スペシャルウィークのダービー馬としての意地が試されるゲートが開いたわ。

 

春に見せていた好位での競馬では無く本来のスペシャルウィークの競馬である差しに徹したの。 

位置取りは後方から4・5番手あたりを進んでいったわ。

 

直線を向き武豊はスペシャルウィークを大外に出し左ムチを一発叩いたわ。 

その武豊のアクションにダービー馬の闘志に火が付いたの。

 

エアジハード、ステイゴールドが先に抜けたところを外から一気に差し切ったのよ。

 

上りはメンバー最速。

 

白井の狙いは当たったわ。

 

史上3頭目の天皇賞・春秋連覇達成。

 

これで完全復活したスペシャルウィークはジャパンカップに出走したの。

 

ここには、凱旋門賞でエルコンドルパサーを破ったモンジューが参戦を表明してきたわ。 

スペシャルウィークにとっては、己の力を知らしめるには絶好の機会だったわね。

 

1999年11月28日第19回ジャパンカップ。 

スタートしポジションはいつも通りの中団待機よ。

 

そのすぐ後方に凱旋門賞馬のモンジューがいたわ。

 

レースは淀みなく流れていき4コーナーで外に持ち出し、坂を上ってから早々先頭に躍り出たわ。

 

そこから脚色は衰えることなく、2番手以下を1馬身半のリードを保ってゴール。

 

 

見事、天皇賞・ジャパンカップと連勝を飾ったのよ。

 

未だ誰も達成していない秋・古馬G13連勝まであと一つ。

 

その最後の有馬記念には、春に苦杯を舐めた馬との再戦が待っていたわ。

 

 

文字通りのリベンジの戦いであったわね。

 

スペシャルウィークにとってはこれが現役最後のレース。 

1999年12月26日第44回有馬記念。

 

グラスワンダーとの勝負もこれで最後。

 

スペシャルウィークと武豊は是が非でもグラスワンダーに勝ちたかったわ。

 

武豊のイメージは既に出来上がっていたの。 

ゲートが開き、ポジションはグラスワンダーが前でスペシャルウィークが後ろという宝塚記念とは逆に位置取りになったわ。

 

確固たる逃げ馬がいない中ペースはスローで落ち着いたわ。

 

4コーナーを前にグラスワンダーが外から先に動き出したの。

 

そして、直線を向いてスペシャルウィークはグラスワンダーの外に馬を出して追い出しを開始したわ。

 

坂を上りグラスワンダーが出た所を外から猛然と黒鹿毛の馬体が追いすがったの。

 

ゴール板では2頭が鼻面を並べてゴール。

 

どっちが勝ったかなんて分からなかったわ。

 

「同着でもいいんじゃないか…」

 

そんな声さえ聞こえるようなゴールだったわね。

 

グラスワンダーの的場均は手応えがなかったのか先に検量室に引き上げてきたわ。 

一方、スペシャルウィークと武豊は勝ちを確信したのでしょうね。

 

ウイニングランをしてスタンド前に戻ってきたわ。

 

ところが…

 

写真判定の結果スペシャルウィークは2着。 

その差は僅か4㎝だったわ。

 

レース後に武豊は「競馬に勝って勝負に負けた」と言ったの。 

これでグラスワンダーとの勝負は終わってしまったわ。

 

種牡馬となったスペシャルウィークはシーザリオ、ブエナビスタと言った名牝を世の残したわ。 

牡馬には恵まれずに種馬として血を残せる馬は数が少ないけど、その血は確実に受け継がれているわね。

 

1990年代最後に現れた稀代のスーパーホース。 

天才を背にし手に入れたタイトルは4つ。

 

その中の2つは天才に初めての勝利をもたらしたわ。

 

天才の騎手人生の中で切っても切る事が出来ない存在。

 

それが、

 

『スペシャルウィーク』

 

なのよ。

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