1999年、凱旋門賞

第78回 凱旋門賞

1999年1月25日、JRA賞授賞式。
この日、エルコンドルパサーの半年間にわたるフランス遠征が発表された。
前年のデビュー以来8戦7勝の成績でジャパンカップを制し、最優秀4歳牡馬として表彰されたエルコンドルパサー。
日本の中距離で圧倒的な成績を残した名馬が、中距離レースを王道とする欧州競馬界に挑戦することが決まったのだ。

その後、遠征先でも実力を発揮し続けたエルコンドルパサーは、同年10月、遂に世界で最も権威あるレースの一つに挑むこととなる。

エルコンドルパサーがフランスに渡った4月、彼をまず待ち受けていたのは、日本のものよりはるかに丈が長く、重たい芝の洗礼だった。
最初は調教場をゆっくりと走るだけでもあからさまに疲れを見せ、特に馬場の柔らかい日はフォームを大きく崩すことさえあったエルコンドルパサー。
しかし入念な調教の結果、走法や馬体が徐々に変化し、初戦のイスパーン賞を2着と善戦してからは状態が大きく上向いていった。

その後、現地のG1サンクルー大賞を制覇して、当年のヨーロッパで最高レートとなる128ポンドの暫定評価を与えられると、凱旋門賞と同じロンシャンの2400mで行われたフォワ賞も勝利。
エルコンドルパサーは、日本競馬界はもとより、現地の競馬ファンからの期待をも背負って凱旋門賞を迎えた。

当日のロンシャン競馬場は、前日までの大雨により、レース史上最も柔らかい馬場となっていた。
洋芝での経験を半年間積み、もはや欧州馬のような馬体となっていたエルコンドルパサーも、ここまでの重馬場に対応できるかどうかは未知数であった。
しかし、春から3戦2勝を挙げた現地での信頼は厚く、当日はアイルランドダービー馬のモンジューに次ぐ2番人気。
現地でも、この日の凱旋門賞は上位2頭の一騎打ちと目されていた。

そして運命の発走時刻。

ゲートが開くと、エルコンドルパサーは果敢にもハナを主張。
大内1枠から良いスタートを切れたことや、前走のフォア賞で逃げる競馬を強いられたこと、また人気馬として出走する本走では他馬にマークを受ける可能性があったことなどから、鞍上の蛯名はこれまでと大きく異なる戦法に打って出たのだ。

モンジュー陣営のラビットとして先行をもくろむジンギスカンとの先頭争いも危惧されたが、このとき当のジンギスカンは出遅れ。
エルコンドルパサーは幸運にも助けられながら、難なく1番手に立つことができた。

向こう正面を過ぎても鞍上との折り合いは良好。
ペースも安定しており、エルコンドルパサーは順調に脚を休めているようにみえた。
6番手から先頭を睨むモンジューらを引き連れ、2番手集団に常に3馬身前後の差をつけながらレースを引っ張っていった。

第4コーナー、早めの仕掛けを見せたタイガーヒルになおも2馬身の差を付けながら、最後の直線を向いたエルコンドルパサー。
大きく広がる馬群を尻目に、鞍上の蛯名騎手は最後の追い出しにかかった。
エルコンドルパサーの反応はよく、後続に対しほとんどセーフティリードにも見える差をつけながら更なる伸びを見せた。

栄光まで残り300m、後続との差は未だ大きく、ほとんどの関係者が勝利を確信した。
残り200m、勝利へひた走るエルコンドルパサー目掛け、馬群の中を黒い影が突き抜けてきた。
この日の一番人気、モンジューである。
逃げるエルコンドルパサーと追うモンジュー、両者はすでに3位以降に5馬身近い差をつけていた。
残り100m、必死に逃げるエルコンドルパサーの外、モンジューの鼻先が前に出た。

しかし、エルコンドルパサーは尚も諦めなかった。
ここで差し返しを果たし、日本競馬界の悲願を果たさねばならない。
モンジューとのたたき合いは壮絶さを増し、2頭は後続馬を更に突き放した。

いっときは先頭に並びかけたエルコンドルパサーだったが、残り50m、モンジューに再び前に立たれると、もはやその位置を奪い返すことはできなかった。
オルフェーブルモンジューと半馬身差、3着以下には6馬身差をつけての2着となった。

日本競馬界から欧州競馬の花形に挑み、日本では考えられないほどの重馬場にも屈することなく2着入賞を果たしたエルコンドルパサー
地元メディアからは「チャンピオンが2頭いた」と称えられ、また国際レーティングについても日本調教馬として歴代最高の134ポンドという数値が与えられた。

勝利こそ果たせなかったエルコンドルパサーだが、彼の活躍は世界を大いに驚かせ、また日本の未来の名馬たちに、凱旋門賞における勝利への道筋を示したのである。

第78回凱旋門賞
1着:モンジュー
2着:エルコンドルパサー
3着:クロコルージュ

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