フジキセキ

フジキセキ

92年に生まれたサラブレッドの中に父親の名前が“サンデーサイレンス” と表記されている馬が多くいる。
社台グループ総帥の吉田善哉が是が非でも欲しかった種牡馬なのだ。
そう、1992年に生を受けたサンデーサイレンスの血を継ぐものたちは この後日本の血統図を塗り替えるほどの活躍を見せた父親の最初の産駒なのだ。

その中に、一際黒光りする父親そっくりに馬がいた。
その時点での評価は他の産駒たちを圧倒するもので1番の期待馬に挙げられていた。

わずか4戦でターフから去ることとなり“幻の3冠馬”と称された馬。

その馬こそ・・・

『フジキセキ』

栗東の渡辺栄厩舎に入厩したフジキセキであったが、ゲート試験に合格するまで5回も要したのだった。
しかし、調教などの動きから調教師の渡辺は期待を抱いていた。

この年の新馬戦ではサンデーサイレンス産駒が次々と勝ち上がり「サンデーサイレンス旋風」とさえ呼ばれていた。

そんな中でフジキセキはデビューを迎えた。
1994年8月20日
新潟競馬場の新馬戦で鞍上には蛯名正義を配した。
距離は1200mでスタートでフジキセキは煽ってしまった。
短距離戦での出遅れは致命傷である。
そのまま後方からレースを進めて行き、4コーナでは3番手まで上がっていた。
そのまま直線で追い出すと見る見るうちに差をつけて8馬身差の快勝。
その能力に疑う余地などなかった。

次に選んだレースは2ヶ月後の阪神で行われるもみじステークスである。
ここには後のダービー馬のタヤスツヨシも出走していたのだが、フジキセキは単勝1.2倍で迎えた。
五分にスタートを切ったフジキセキはそのまま中団からレースを進めていく。
4コーナーにかけて馬なりで上がっていき直線では先頭に立っていた。
手応えは抜群。
その後ろにいたタヤスツヨシが必死に追っているにもかかわらず、鞍上の角田晃一は軽く仕掛けただけだった。
ムチなんて不要。
そんなアクションに応えた後のダービー馬を子供扱いしたのだ。

噂に違わぬその走り。
3歳王者どころかその先のダービーまでさえ道が見えているようであった。

1994年12月11日第46回朝日杯3歳ステークス
フジキセキは当然の如くこのレースに出走してきた。
当たり前の1番人気。
そろった頭数は10頭とG1では多くはなかった。

1番枠からスタートを切ったフジキセキは好位の内5番手でレースを進めていく。
幾分引っかかっているようにも見えた。
そのまま直線を向き最内を突いて伸びてくる。
大外からスキーキャプテンが迫ってくるがクビ差凌いでのゴール。
苦戦したように見えたがムチを1発も使うことなくの勝利に鞍上の角田晃一もこの馬の能力に脱帽した。
「とにかくモノが違う!!」
その言葉がこの馬の強さを物語っていたのかもしれない。

文句無しでこの年の最優秀3歳牡馬の称号を手にした。
次なる目標はもちろんクラシック制覇であり3冠への挑戦であった。

年が明けてフジキセキは皐月賞トライアルの弥生賞からスタートを切った。
この弥生賞こそがフジキセキが志半ばでターフを去り伝説と化すレースなのだ。

パドックに現れたフジキセキの馬体重がプラス16キロであったが単勝は1.3倍のダントツ人気。
9番枠からスタートするとそのまま馬の気に任せて2番手からのレースを選択した。
前半1000m通過が62.5というスローペース。
そのペースの中、フジキセキは3コーナー過ぎから早々と進出し直線では先頭に立った。
坂下で一旦ホッカイルソーに迫られるが再び加速しそこから2馬身半離してゴール。
この勝ち方はもはや異次元といっても過言ではなかった。
もうこの時点でフジキセキの力はクラシック級であり、その器を遥かに超えていたのかもしれない。

皐月賞はたまたダービーまですでに当確と言われていたフジキセキを競馬の神様が良しとしなかった。
そのとてつもない強さに嫉妬したのだ。

その結果・・・

『フジキセキ。屈腱炎を発症。引退決定』

こんなニュースが急に舞い込んできた。

それは絶望という以外の表現が見当たらなかった。

その後のクラシックはサンデーサイレンス産駒たちが大活躍し、3歳時に子供扱いしたタヤスツヨシがダービーを勝った。
たらればではあるが、もしフジキセキが出ていればと思ってしまう。

偉大な父が最初に世に出した最初の傑作。

それが・・・

『フジキセキ』

なのだ。

フジキセキ
生年月日:1992年4月15日
父:サンデーサイレンス
母:ミルレーサー
戦績:4戦4勝
主な勝ち鞍:'94朝日杯3歳ステークス(G1)
調教師:渡辺司
騎手:角田晃一
馬主:斎藤四方司
生産者:社台ファーム千歳

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