ファインモーション

ファインモーション

その体に搭載されたサラブレッドとしてのエンジンは牝馬の域を遥かに超えていた。
男勝りの勝気な気性。
引くだけ引いて放たれた弓と言う名のスピードは瞬く間にゴールへと向かって行くのだ。

名調教師・伊藤雄二がフランスに目標を置いたほどのポテンシャルを持った馬。

それが

『ファインモーション』

兄は97年のジャパンカップを制したピルサドスキー。
持って生まれた血は日本に留まるレベルでは無かった。
寧ろ、ヨーロッパで走らせられるほどの血を持った馬であった。

そんな血統背景に魅せられた、北海道にある伏木田牧場場長の伏木田達男が繁殖牝馬として購入し日本にやってきたのであった。
しかし伏木田は競走馬としては走らせる気は無かった。
だが、調教師の伊藤雄二の目にとまりデビューが決まった。

デビュー戦は12月1日の新馬戦。
鞍上には武豊を配して臨んだ。
その血統背景などもあり、単勝は一時期1.0倍まで行くほどの支持を集めていた(最終的には1.1倍)

兄のピルサドスキーは最後の末脚が持ち味であったが、妹のファインモーションは絶対的なスピードが長所であった。
スタートを切るや否やハナに立ってレースを作っていく。
圧倒的な人気馬が自ら目標になるようなレースの形を選んでいった。
1000m通過が64.7と明らかなスローペース。
後続もすぐ後ろにいるような流れだった。
4コーナーを前に後ろの馬がファインモーションを目掛けて迫って来たのだが、ファインモーションはそんな事お構いなし。
直線で追い出した途端、エンジンに火が付いた。
そのまま上り34.0の末脚で4馬身もの差を付けて勝利。
噂に違わぬ勝利であった。

しかし、ファインモーションには一つ超えることの出来ない大きな壁があった。
それは、“外国産馬のクラシック出走不可”というものだった。

タラればになってしまうが、桜花賞とオークスも走っていれば間違いなく勝ち負けになっていただろう。

そんな閉鎖的な制度によりクラシック出走を阻まれたファインモーションは、 日本のオークスではなくフランスオークスを目指すプランが持ち上がったのだが、 この春は休養に充て夏の函館からファインモーションは復帰を果たすのであった。

半年以上の休みを経てファインモーションは、8月の函館の500万で復帰をした。
長期休み明け、初の古馬との混合戦などあったが結果は楽勝であった。
続く、札幌の準オープンの阿寒湖特別も圧勝し秋華賞トライアルのローズステークスへ進んだ。

もはや、敵などいなかった。
春にクラシックを賑わした馬たちをほとんど手綱を動かすことなく蹴散らしたのだ。
秋華賞の勝ち馬は決まった!
そんな空気さえ流れていた。

それから、秋華賞に進んだファインモーションをファンは1.1倍で迎えた。
これが、答えだった。
恐らく春のクラシックに出ていても同じ答えだったであろう。

ゲートが開きあっという間に先団に取り付いた。
しかし、この時からやや引っ掛かる素振りを見せるようにはなっていた。
終始5・6番手でレースを進めて行き、4コーナー手前で一気に加速して上がって行くファインモーション。
武豊が追い出しにかかると瞬く間に差を広げ3馬身半の完勝であった。
おまけに勝ちタイムは1:58.1のタイレコードであった。

もう同年代の牝馬に敵う馬など存在しなかった。
向かう先は古馬との戦い。
そこしかなかった。

2002年11月10日京都競馬場で第27回エリザベス女王杯が行われた。
ここまで無敗の5連勝で挑んできたファインモーションであったが、この馬には古馬の壁さえ低く見えていただろう。
1.2倍のダントツ人気と、ここでもファンの信頼は揺るぎないものだった。

大外枠からスタートすると、スピードに任せて3番手でレースを進めて行く。
なんとも気持ちよさそうな走りであった。
3コーナーの坂を下り4コーナー手前から一気に仕掛けた武豊。
ファインモーションは仕掛けられてからの反応が抜群であった。
4角先頭で直線を向いてからは上り33.2で2着のダイヤモンドビコーに2馬身半の差を付けて勝利を収めた。
この時点での搭載されているエンジンの馬力が違っていた。

そして、この勝利は日本競馬史上で初の無敗の3歳馬による古馬G1制覇と言う偉業が達成された瞬間であった。
未だこの大偉業を達成したのはファインモーションしかいないのである。

歴史に名を刻んだファインモーション。
この時点で僅か6戦。
それでもこれだけインパクトを残せたこの馬はこの先どうなっていくのだろうと言うのが注目されていた。

そんな歴史に名を刻んだ名馬が次に選んだのは、暮れの総決算有馬記念である。
この馬なら歴史の扉は開けられると思った。

しかし、開いた扉の向こうには待ち受けるはずのない試練や苦悩が待ち受けていた。

2002年12月22日の中山競馬場で第47回有馬記念が行われた。
ファインモーションは単勝2.6倍の1番人気。
ファンは怪物牝馬をこの舞台で栄えある1番人気に支持をした。
そう、この馬ならこの高い壁も超えられると思っていた。

ゲートが開き、タップダンスシチーがハナに立った。
その後ろにファインモーションがいた。
最初のメインスタンドに来たとき、ファンの大歓声にファインモーションの持っていたエンジンに火が付いてしまったのだ。
1コーナーを前にハナに立ち自分でペースを作って行こうと思った矢先、 2番手にいたタップダンスシチーがファインモーションを抜いて再びハナに立ってしまった。
これまで、非の打ち所がない競馬で勝ってきた3歳の牝馬にとってはこの展開は厳しい以外の何物でもなかった。
この時点でもう余力など残っておらず5着に入るのが精一杯だった。

この有馬記念を境に、ファインモーションは勝気な女性へと徐々に変化をしていくのである。

翌年、ファインモーションは夏のクイーンステークスから始動した。
古馬になっても牝馬戦なら負けるはずがないと思われていたが、結果は逃げたオースミハルカを捉えきれず2着。
まさかの敗戦だった…。

夏はこの1戦で秋は東京の毎日王冠から天皇賞(秋)を目指すプランだった。
曇り空の東京競馬場。
ここでも、単勝は1.3倍の1番人気。
前走、牝馬に負けたとはいえ評価が下がるわけではなかった。

スタート後、スンナリハナに立ってしまった。
それも、口を割りながら走っていた。
折り合いを欠いてるようには見えなかったが、ムキになって走っていたのは間違いない。
その結果、最後は失速し7着の大敗。
馬の機嫌を損ねるともはや収集がつかなくなってしまっていた。

次走は距離を1ハロン短くしマイルチャンピオンシップに向かいデュランダルの末脚に屈するも2着を確保。
何とか面目は保った。

年内最後には、牝馬限定戦の阪神牝馬ステークスになった。
ここは、ダントツ人気の応えて勝利。

翌年は半年以上の休みを挟んで安田記念に出走。
しかし、ここでも久々のせいか折り合いを欠いてしまい13着と惨敗だった。

この頃のファインモーションは休み明けでは極端に気性が勝ってしまい、レースを使っていくうちにガスが抜けていくような感じであった。

その後の函館記念を2着になったあと、札幌記念に向かった。
頭数は11頭と多い方では無かった。
ゲートが開き武豊とファインモーションは殿からレースを進めるのであった。
3歳時は先行力が武器だった馬が完全にシフトチェンジをした。
そして、休み明け3戦目という事もありしっかり折り合っていた。
4コーナー手前で先団を射程圏に入れると、最後は粘るバランスオブゲームをクビ差捉えてゴール。
今までのイメージを一変させる会心の勝利であった。

その後の函館記念を2着になったあと、札幌記念に向かった。
頭数は11頭と多い方では無かった。
ゲートが開き武豊とファインモーションは殿からレースを進めるのであった。
3歳時は先行力が武器だった馬が完全にシフトチェンジをした。
そして、休み明け3戦目という事もありしっかり折り合っていた。
4コーナー手前で先団を射程圏に入れると、最後は粘るバランスオブゲームをクビ差捉えてゴール。
今までのイメージを一変させる会心の勝利であった。

そこから休みを挟み再びマイルチャンピオンシップに出走した。
道中、武豊が我慢をさせるも札幌記念ほど折り合っているようには見えず最後は伸びを欠き9着。
これが最後のレースとなった。

オーナーの伏木田達男がファインモーションを購入した最大の理由は、繁殖牝馬としての活躍であった。
サンデーサイレンスが亡くなって、最初に配合相手に選ばれたのはキングカメハメハであった。
が、結果は不受胎。

しかし、ファインモーションは少し話が違っていた。
その後、いくら種付けをしてもファインモーションの体に子供が宿る事は無かった。

検査の結果、医学的に受胎が不可能な体であることが判明した。

繁殖牝馬として購入をしたのだが、本来の目的は果たされることは出来なかったのだ。

あの、類まれなスピードを持った遺伝子を後世に残せないのが残念でならない。
しかし、ファインモーションがレースで見せた驚愕の走りは後世に語り継がれいていく事は間違いない。

武豊にエスコートされ輝きを放った気品に溢れたお嬢様。

『ファインモーション』

なのだ。

ファインモーション
生年月日:1999年1月27日
父:デインヒル
母:Cocotte
戦績:15戦8勝
主な勝ち鞍:'02秋華賞(G1) '02エリザベス女王杯(G1)
調教師:伊藤雄二
騎手:武豊
馬主:伏木田達男
生産者:バロンズタウン スタッド&オーペンデール

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